from飯野恵太
横浜オフィスより
孫正義。
言わずと知れたソフトバンク創業者であり、
日本経済界のトップをひた走る経営者ですね。
経営者の中でも、
稲盛和夫さんと、
孫正義さんを特に
尊敬しています。
定期的に、稲盛和夫さんの「生き方」や、
孫正義さんを題材にした「起業の若き獅子」を
読み返すのですが、彼らのすごさに、
いつも心が躍ります。
孫さんの逸話で、特におもしろいものがあるので、
紹介したいと思います。
孫さんは、創業間もなくして、
会社が猛スピードで成長しているときに、
肝炎で入院生活を余儀なくされるのですが、
入院中は、現場を離れて、回復に務めていました。
復帰したころに、
ソフトバンクの出版部門が、
深刻な赤字に陥っていたので、
それを立て直すために、
みずから出版事業の部長になって、
指揮を取り始めました。
彼は、まず始めに、コスト削減のために、
断腸の思いで、人員削減を決断するのですが、
出版部の従業員は、
「利益があがればそれでいいのか!社員たちは、駒にすぎないのか!」
といって、孫さんと真っ向から対峙したんです。
そして、「話にならん!」といって、
従業員は、その場を立ち去ろうとしたのですが、
その背中に、孫さんはこう浴びせかけたんです。
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話が終わってもいないのに、なんで出ていくんだ!
どうしても出ていくなら出ていってもいい。
出ていくなら二度と帰ってこなくていい。
そしたら、これが最後の別れになるかもしれないので、
いまここでとことん話をしようじゃないか!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これを聞いた従業員一同、
頭から水をぶっかけられた気がしたらしいです。
すごいですよね。
こんなことができるのって、
めちゃくちゃすごいと思うんです。
普通だったら、そのまま怒りに任せて、彼らを追い出してしまい、
頭が冷えた頃に、日時を変えて仕切り直すとか、
そんな感じだと思うんです。
でも、孫さんは、なんのためらいもなく、
相手を席につかせようとしているんです。
しかも、何がすごいって、
彼らが出ていこうとしたこと そのものを
席につくべき理由にとって変えたんです。
出ていこうとする
↓
なら、帰ってこなくていい
↓
つまり、最後の別れ
↓
最後になるなら、いまとことんやろう
おそらく、真っ向から対立した状態で、
「出ていこうとするな!!席につけ!!」と
言っても、おそらく、頭に血がのぼった従業員は、
話を聞こうとはしなかったと思います。
孫さんの、並々ならぬ情熱と機転が招いた
発言だったんですね。
そして、その出版事業部は、どうなったかというと、
半年後には、ほぼすべての雑誌が黒字に転化して、
事業部自体も黒字になったんです。
ほんの数か月前までは、深刻な赤字で、
当時の役員全員が、出版事業部を潰したほうがいいと
言っていたにも関わらず。
そして、この出版事業部は、
いまもSBクリエイティブと会社化までされて、
ソフトバンクを支えているんですね。
単純に、孫さんすげーなーと思ったのですが、
同時に、理由の力もやっぱりすごいんだなーと
思いました。
同じようなお願い、主張であっても、
理由を伝えることで、相手の反応は大きく変わりますよね。
孫さんは知ってか知らずか、
この人間の行動心理をうまく突いていたんですね。
さっきも書いたように、
「出て行くな!席につけ!」
と主張だけ伝えるんじゃなくて、
これが最後の別れになるかもしれない「ので」、
いまここで、とことん話し合おうじゃないか
と、明確に理由を伝えているんですね。
孫さんのパワフルさはすごい。
そして、理由の力もパワフルなんですね。