価値の相対性from 飯野恵太
横浜オフィスより
大学二年のとき、アメフトの練習中に
前十字靭帯を断裂したことがあります。

群馬の病院に入院したのですが、
その病棟では、入院している人のほとんどが
お年寄りの方で、同世代はいなかったのです。

話し相手もいなかったので、
ゲームボーイでドラクエばっかりやっていたのですが、
ある日、同じ病室に同い年くらいの子がやってきたのです。

話を聞くと、年も一緒だし、
たまたま大学も一緒だったので、
すぐに僕たちは仲良くなりました。

同じ病室のおじさんに怒られるくらい
よく笑って話していたのを覚えています。

とにかく、ものすごく仲良くなったんです。

その後、二人とも退院してから、大学で会うことがありました。
お茶をしながら、また語り合ったのですが、
なんかあのときの感覚と違うんです。

病院にいるときは、「無二の友」くらいに思っていたのに、
大学であった時には、そこまで盛り上がらず、
お茶をしてからは、顔を合わせたら「おう!」と言うくらいの
仲になってしまったんです。
なんで、入院しているときは、あそこまで仲よかった二人が
こうなってしまったのか?

これには、「相対性の力」が働いていたからなのです。

病院では、僕のまわりにはお年寄りばかりで、
友達はいませんでした。
そこに、この同世代の彼が来たことで、
文字通り唯一の友達ができたんです。

それは彼にとっても同じだったので、
お互いがとても仲良くなったのです。

話し相手のいないコミュニティの中では、
お互いの存在が輝いて見えたのです。

しかし、大学に戻ったら話は別です。
僕には、アメフトの仲間やクラスの友達がいて、
彼にも、ストリートダンスの仲間がいました。

気の合う仲間のいる大学では、
お互いの存在がそこまで魅力的ではなかったのです。
この「相対性」は、顧客の意思決定にも
ものすごく大きな影響を及ぼします。
あなたがラーメンを食べに行ったとします。
そのお店には3つのラーメンがあります。
1、醤油ラーメン
2、味噌ラーメン(素材が中国産)
3、味噌ラーメン
素材が国産のラーメンの中に、
味噌ラーメンだけは素材が中国産のものがあります。

この3つの選択肢があるとき、
どのラーメンが選ばれる可能性が高くなると思いますか?

実は、「3」の味噌ラーメンなのです。

味噌ラーメンに2種類あるところが、ポイントなのです。
人は、価値を測る時に、無意識のうちに相対的に測定するのです。

醤油ラーメンと味噌ラーメンの2種類だけだったら、
選ばれる率は、大差ありません。

しかし、素材が中国産の味噌ラーメンを用意することで、
「相対的」に国産の味噌ラーメンは、よりおいしく見えるのです。

不思議なことに、
中国産の味噌ラーメンよりもおいしく見えているせいで、
醤油ラーメンよりもおいしくみえてしまうのです。
もし、「2」で用意するラーメンが
中国産の醤油ラーメンだったら、結果は逆になるのです。
このように、人の価値の基準というのは、
相対的に決まることが極めて多いのです。
先生が患者さんに何かのサービスや商品の価値を伝えるときに、
価値の「相対性」は決して忘れてはいけません。
それだけの価値を伝えるよりも、
何かと比較して、伝えることで、
つまり「相対的」に伝えることで、
価値を理解してもらいやすくなることがあるのです。